タイ基幹業務システム構築の勘所 (1) 在庫管理の範囲について

この記事シリーズはタイで生産管理システム、販売管理システム、在庫管理システム、原価管理システム、ERPなどのいわゆる基幹業務システムを構築する際に留意すべきことを筆者の経験を踏まえてお話していきます。

第1回:在庫管理の範囲

生産管理システム、販売管理システムのスコープ

生産管理システム、販売管理システムの導入の目的は会社によって様々であろうかと思います。
例えば
・受発注の業務が煩雑なので簡単にしたい
・在庫と生産計画を連動させて過剰在庫を圧縮したい
・生産計画に対する進捗が追いかけられる状態にしたい
などなど、いろいろあります。

筆者はコンピュータ業界に入って20年ほど経ちますが、20年前から日経コンピュータという業界誌には「動かないコンピュータ」という連載記事がありました。最近は日経コンピュータをほとんど読んでいませんが、今でもこの連載はあるようです。

ところで、生産管理システムの対象業務は
・受注
・出荷
・購買
・生産計画
・生産進捗管理
・在庫管理
・ロット追跡
・原価管理
とあまりにもスコープが大きいことと、生産計画・生産進捗管理のいわゆる生産管理業務は同じ製品を作っていても会社が異なるとまるで違ったりするなど、ERPシステムの中でも導入から定着までに最も呻吟するシステムと思われます。

簡単に言いますと、生産管理システムは「動かないコンピュータ」になりやすいのです。

一方の販売管理システムの対象業務は、
・受注
・出荷
・購買
・入金出金
・在庫

と生産管理システムに比べるとだいぶスコープは狭まります。

「動いているコンピュータ」とは?

とりわけ生産管理システムは対象業務が広いため、導入される企業様も全ての機能を使いこなそうとは最初から計画していないケースもあります。
弊社のお客様で、EXEX生産管理システムを導入されたお客様は工程管理(生産進捗管理)のみをご利用して頂いているケースもございます。

あるいは全部の機能を導入して頂いても全ての機能で100点満点の評価を得るのは、実に大変なことであります。

したがいまして、全ての機能を100点満点の評価が得られないと「動かないコンピュータ」と言われてしまうのは、非常に厳しいところです。
ところで別の切り口から考えて見ます。これだけは100点満点でないといけないという機能は何なのか?

いろいろなご意見もあろうかとは思いますが、筆者が思うに

在庫管理ができていない生産管理システム・販売管理システムは「動かないコンピュータ」と言われてもしかたがない。

と、考えております。

Stock と Inventoryの違い

在庫管理だけなら、バーコードを使った在庫管理システムが3万円くらいで売っているよ・・何も難しいことではないではないか。
そういうご意見もあるかもしれませんが、ここで「在庫」について改めてその意味を考えてみます。

在庫を英語に訳すとStockとInventoryの2つの訳がヒットしますが、一体何が違うのでしょうか。これにはどこにも答えは出ていませんが、筆者が考えるところは

Stock:品番と現在手持ちの数量のこと
Inventory:品番と現在手持ちの数量とその金額評価のこと

会計でInventoryと言えば、棚卸資産のことです。在庫はしかるべく科学的根拠のある方法で金額換算されなければ会計上棚卸資産として計上できません。

3万円くらいのバーコードを使ったシステムで実現できるのは Stock ControlもしくはWarehouse Managementであり、金額まで管理できている Inventory Management ではない、ということになります。

Stock ControlもInventory Managementも日本語に訳すと、在庫管理ですが。

Inventory Managementに必要なもの

StockとInventoryの違いは金額が管理できているかどうかの違いですが、金額管理というファクターが入るとその難易度は天と地くらいの差がでてきます。

なぜなら在庫金額が管理できているためには

・出荷数量
・出荷数量が管理できるためには受注情報が管理されている必要がある
・購入金額
・購入金額が管理できるためには発注金額が管理されている必要がある
・生産での部品材料使用量
・生産数量、不良数量

が全て管理されている必要があるからです。
つまり、生産管理システムの機能のうち

・受注
・出荷
・購買
・生産進捗管理

はきちんと動いていないと在庫管理はコンピュータでできない、ということなのです。

生産管理システム・販売管理システムの最初のターゲットは在庫管理

そのような理由で、筆者は生産管理システム・販売管理システムを導入されるお客様には最初に実現すべきターゲットは在庫管理である、とお話しております。
在庫管理を実現するには、在庫管理をやるのではなく

・受注
・出荷
・購買
・生産進捗管理

をコンピュータを活用して行うことにより、結果的・必然的にコンピュータで在庫管理ができてしまう、ということです。

なお、在庫管理がコンピュータでできていれば

・Stock Card
・BOI管理

などタイの会社が毎月末に作成する書類はコンピュータ内での集計だけの問題に帰結されるのです。

 

次回より数回にわたり、タイで在庫管理を行うためのポイントとなる点についてお話して参ります。

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