タイ基幹業務システム構築の勘所 (7) 適正在庫について

この記事シリーズはタイで生産管理システム、販売管理システム、在庫管理システム、原価管理システム、ERPなどのいわゆる基幹業務システムを構築する際に留意すべきことを筆者の経験を踏まえてお話していきます。

第7回:適正在庫 について

生産管理にまつわり比較的よく耳にする適正在庫という言葉ですが、適正在庫を実現できたら生産管理上のほとんど全ての課題は解決されている、と筆者が思う理由についてお話いたします。

適正在庫の考え方の基本

まず、そもそもなぜ適正在庫という考え方が生まれたのか、という基本的なお話から。
在庫が多い場合の弊害
(1)キャッシュフローを圧迫する。
在庫は資産に計上されるので、多く持っているとB/Sの資産は増えますが、黒字倒産のリスクも増えます。
(2)維持費もかかる
倉庫に保管するにも保管料が発生します。維持するのも無料ではありません。
(3)破棄リスクも高まる
使われないまま、売れないまま破棄せざるを得なくなる、デッドストックになるリスクもあります。
在庫が少ない場合の弊害
(4)欠品による納期遅れが起こる
(5)欠品による失注(機会損失)が起こる

上記のような理由で、多すぎず、少なすぎない適正在庫という考え方が生まれたのでしょう。
「ジャストインタイム」という言葉もありますが、これはその部品なり材料が必要になるその直前まで在庫を持たないという考え方です。つまり、ジャストインタイムは適正在庫という考え方を通り越して、在庫ゼロを追究した方法、とも言えるでしょう。

生産管理における命題のトレードオフ関係

生産管理には様々な命題、言い換えると、難しいが改善したいお決まりの課題、というものがいくつかあります。そして、それらの課題は常に「在庫を持たない」という命題と対立するトレードオフの関係にある、ということをお話します。

命題1.原価を下げる
原価を下げる1つのファクターは生産ロットを大きくすることです。つまり1000個を1回で作るのと、100個ずつ10回に分けて作るのを比べれば、段取りに発生するコストが1回で済む分1000個をまとめて作った方が効率的です。
つまり
原価を下げる ⇔ 在庫を持たない
は対立する命題になっています。

命題2.工場稼働率を上げる
原価を下げるという命題とも関係しますが、工場ではできるだけ稼働率を上げた方が原価は下がります。これは、生産してもしなくても工場では常に減価償却費などの固定費が発生しているため、稼働率を上げた方が生産品目1個当りに賦課される固定費が少なくなるからです。稼働率を上げることだけを目的にした場合は、売れないものまで作るという極端なことまでやりかねなくなります。
つまり
工場稼働率を上げる ⇔ 在庫を持たない
は対立する命題になっています。

命題3.負荷を平準化する
ある日に1000個の出荷があるが、ある日は全く出荷がないというような波の激しい状態に対応するためには、出荷予定日に間に合う範囲で作りおきしておき、生産数の日による変動を少なくしようという考え方があります。これは限られた工場資源を最大に活用しようとすると当然の考え方です。しかし、作りおきしておくということは在庫を持つということです。
つまり
負荷を平準化する ⇔ 在庫を持たない
は対立する命題になっています。

生産管理が難しい理由

上記の例のように、現実的には在庫をゼロにするというのは不可能でしょうが、可能な限り在庫を少ない状態で様々な課題を解決していくのが生産管理システムのテーマとも言えるかもしれません。
逆に言うと、生産管理の様々な課題は「在庫はいくらでも持ってよい」という条件があれば、解決するのは非常に易しい課題になってしまうとも言えます。
つまり生産管理が難しいのは、「在庫は可能な限りゼロにする」という条件の下で様々な課題を解決していかねばならないから、とも言えるかもしれません。

生産管理システムを導入する目的とは

生産管理システムを導入すればすぐに生産管理上の様々な課題が解決する、というわけでは決してありません。というのも、生産管理だけにとどまらず、利益管理だとか販売目標管理だとかプロジェクト管理だとか、およそあらゆる種類の管理(マネジメント)が成果を上げるためには、Plan、Do、 Check、 Action のいわゆるPDCAサイクルを継続的に実行する必要があるからです。生産管理システムはPlanとDoとCheckに関しては指標データ、実績データを提示できます。生産管理システムの導入目的は PDCAサイクルのうちのPDCのデータを提供するため、と言えるかもしれません。そして、実際に成果を出すためには生産管理システムから提供されるデータを活用(Action)して初めて本当の目的であった生産管理上の課題が解決されるのではないでしょうか。

そして生産管理システムが人間よりも得意な点は、
在庫を限りなくゼロにするという制約下で、様々な計算をすること
ではないか、と筆者は考えております。

弊社が提供しております、EXEX生産管理システム、EXEX販売管理システムも在庫を可能な限りゼロにしながら各工場の課題解決に役立つシステムであると自負しております。

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