タイ基幹業務システム構築の勘所 (9) リードタイムについて

この記事シリーズはタイで生産管理システム、販売管理システム、在庫管理システム、原価管理システム、ERPなどのいわゆる基幹業務システムを構築する際に留意すべきことを筆者の経験を踏まえてお話していきます。

第9回:リードタイム について

前回記事で、MRP(Material Requirements Planning、 資材所要量計画)についてお話した際、何度も登場したリードタイムという言葉。生産管理システムや生産スケジュールの世界では、様々なリードタイムが登場します。今回はMRPやスケジューラーで使われるリードタイムについてお話します。

生産管理システムや生産スケジューラで考慮されるリードタイム

輸送リードタイム/搬送リードタイム

輸送リードタイム/搬送リードタイムという言葉は存在しないかもしれませんが、要するに自社の倉庫から納品先に到着するまでの時間のことです。輸送リードタイムは、出荷元倉庫と搬送先と輸送手段によって決められるのが普通です。

出荷リードタイム

出荷指示が出てから梱包などをして出荷できる状態になるまでに要する時間のことです。

調達リードタイム

部品や材料を発注してから納品までに要する時間です。通常仕入先ごとに基準となる調達リードタイムを設定しますが、品目ごとにさらにリードタイムをプラスマイナス調整できます。

製造リードタイム

工場管理で製造リードタイムというと加工・検査・運搬・停滞(仕掛状態でいる時間)の合計時間を指すことの方が一般的かもしれませんが、MRPやスケジューラーでは加工や検査、運搬なども1つの工程と考え、工程ごとに以下の時間を考えます。

【前段取り時間】

製造前にの段取り時間

【後段取り時間】

製造後の片付け時間

【加工時間】

加工するのに要する時間
なお加工時間の設定も連続処理かバッチ処理かによって1個当りの時間なのかバッチ当りの時間なのか変わってきます

連続処理の加工時間 = 1個当り加工時間×オーダー数量
バッチ処理の加工時間 = ROUNDUP(注文数/バッチ数量)×バッチ当り加工時間

さらに、作業分割して並行処理ができる場合は合計のサイクルタイムは個々の分割された作業時間の合計よりも短くなり、こういう考慮もスケジューラーでは可能です。

タイの製造業におけるリードタイム管理

ここまで様々なリードタイムが登場してきました。生産管理システムや生産スケジューラーに初めて触れるシステムエンジニアを教育する際にも、これらのリードタイムの関係を全て理解させるのは一苦労です。

また、生産管理システムを導入プロジェクトの中心メンバーとなる製造業のスタッフの方にはこれらリードタイムを理解してもらった上で、全てのデータを準備してもらわなければなりません。

筆者がこれまで拝見してきた経験ですと、こういうデータを準備してくださいといってすぐに出せる状態になっている会社様は非常に稀で、多くの会社では生産管理システム導入のタイミングでこれらデータを算出するケースが多いようです。

言い換えると、生産管理システムを利用するまではこれらリードタイムもどんぶり勘定で処理してきたケースが多いと言えるかもしれません。

幸いなことに弊社がお手伝いして参りましたお客様は、生産管理システム導入をきっかけとしてこれらのデータに注意し、さらにPLAN-DO-CHECK-ACTIONのPDCAサイクルを回してリードタイムデータの精度向上に努めて頂いております。

これらリードタイムは当然ながら生産性向上や業務改善により変化していくものですから、一度設定したマスタを放置せず常に更新をかけていくことが生産管理システムや原価管理システムを使いこなしていく上で非常に重要になります。

リードタイムの短縮は在庫削減に寄与する

リードタイムを短くすることは在庫削減と大いに関係があります。

受注〜納品までのリードタイム
が短ければ、受注の変更などを心配せずに確定した受注分だけ製造すればよくなります。つまり製品在庫の作りおきをしなくて良くなりますし、製品在庫の作りおきのための部品や材料も調達する必要がなくなります。
調達リードタイム
が短ければ、極端な話、受注が確定してから部品や材料を調達しても良くなります。つまり調達する部品や材料は必ず消費され在庫になることはありません。
製造リードタイム
が短ければ、生産の小ロット化が可能になり、生産ロットが小さくなれば必然的に仕掛在庫は減ります。受注に対して在庫というバッファーを通さず、受注=生産指示の状態に近づくので製品在庫は減ることになります。

生産管理システムを導入し、PDCAサイクルを回して各リードタイムを短縮させていくことは、結果的に工場の生産性・競争力の向上に寄与するという訳です。

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